人吉市いじめ調査委員会(再調査委員会)の調査報告書の公表について
次の事案に関し、令和2年度から令和5年度にかけて、「人吉市いじめ調査委員会」(いじめ防止対策推進法及び市条例に基づく再調査委員会)が再調査を実施した結果を調査報告書としてまとめ、令和5年2月8日に市長に対して答申がありましたので公表します。
- いじめ事案の概要
平成29年度から令和元年度に人吉市内の中学校に在籍した生徒が、学校でのいじめが原因で令和元年9月以降不登校になり、重大事態として認定された事案
調査報告書 前半02(令和5年2月8日) (PDF 2,281KB)
調査報告書 後半(令和5年2月8日) (PDF 7,071KB)
調査報告書に対する所見(令和5年2月8日) (PDF 520KB)
プライバシー保護の観点から、一部の情報をマスキング処理しています。
上記調査委員会の報告を踏まえた再発防止の取組について(令和5年12月1日公表)
過去(平成29年から30年)に人吉市内の公立学校で発生し、後に重大事態となったいじめ事案への対応の中で、その端緒になると考えられるアンケートが廃棄されていました。
後に重大事態になる可能性もあるいじめに関するアンケート結果が、当該生徒がまだ在籍中であるにもかかわらず廃棄されていたことについては、明らかに不適切な対応でした。当時、いじめに関するアンケート調査の重要性を認識していなかったことで、いじめの全容を把握することが困難となり、当該いじめ重大事態に関する調査期間が長期におよぶこととなってしまいました。
いじめの被害を受けた生徒及びそのご家族に、多大なるご心労をおかけすることとなりましたことについて深くお詫び申し上げます。
人吉市教育委員会といたしましては、今回の事案を踏まえ、学校等と協力しながら以下の点について改善を図り、再発防止に向けて取り組んでまいりたいと存じます。
記
- いじめ調査等の記録の保存について
(1)記録の保存期間について
今回、人吉市いじめ防止基本方針を改定し、いじめに関する調査のために実施したアンケートの原本等を、被害児童生徒の卒業から少なくとも5年間は保存することとしました。(学校が定期的に実施しているアンケート・個人面談の記録、いじめの通報・相談内容の記録、児童生徒に対する聴き取り調査を行った際の記録等。教職員による手書きのメモの形式をとるもの等も含む。)
(2)記録の廃棄について
これらの記録の廃棄については、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(平成29年3月、文部科学省)に則して、被害児童生徒・保護者に説明の上、行うこととしました。
また、個々の記録の保存について、被害児童生徒・保護者からの意見を踏まえ、保存期限を改めて設定しなおすこともできる旨を明記しました。 - いじめの未然防止、早期発見、早期解消の取組の更なる充実
人吉市教育委員会は、下記の事項について、校長会議、教頭・主幹教諭会議、学校訪問、情報集約担当者会等において適宜指導・助言し、各学校におけるいじめの未然防止、早期発見、早期解消の取組の更なる充実に努めます。
(1)各学校におけるいじめ対策
ア 未然防止
(ア)道徳教育・人権教育・体験活動の充実
(イ)特別活動の充実
(ウ)ストレス対処教育・教育相談体制の充実
(エ)家庭や地域との連携
(オ)情報モラル教育、情報安全指導の充実
イ 早期発見
(ア)日常的な観察等
(イ)定期的なアンケートの実施
(ウ)教育相談の実施
(エ)相談体制の構築と相談窓口の周知
ウ 早期解決
(ア)組織的に対応
(イ)迅速な初期対応
(ウ)関係機関との連携
(2)人吉市教育委員会の取組
ア 人吉市いじめ防止基本方針の見直し・改定
イ 人吉市いじめ問題対策連絡協議会との連携
ウ 校長会議、教頭・主幹教諭会議、学校訪問、情報集約担当者会等による指導・助言等
エ 毎月の定例報告を受けての指導・助言及び連絡・調整等
オ 教育相談体制の強化・充実
(3)教職員間における共通理解の場の設定について
各学校では、これまでも「児童生徒理解の日」等を定例で開催し、共通理解を図ってきたところです。また、「いじめ不登校対策委員会」を定期的に開催しており、個別の事案についての協議を深めています。さらに充実した取組となるよう、市内校長会議、教頭・主幹教諭会議等で周知徹底を図ります。
(4)いじめを許さない指導の充実について
各学校においては、心の居場所としての学校・学級づくり、豊かな体験活動等を通して、自尊感情や自己肯定感の高揚を図る取組を進めてきました。また、地域ぐるみでいじめを許さない学校・学級づくりに向けて取り組む気運を高め、児童生徒が主体となった取組を進めています。具体的には、児童会・生徒会が主体となり、「いじめを許さない学校・学級づくり」を目指した協議や交流を図る集会活動等を実施したり、いじめに関する道徳や特別活動等の授業等を実施したりします。いじめに直接関わることだけでなく、周りの児童生徒の関わりも重要であることについての指導の充実を図り、「ストレス対処教育」や「SOSの出し方に関する教育」の充実にも努めます。また、児童生徒と保護者が一緒に学ぶ、情報モラルに関する授業や講演会等を実施します。そのために、教職員の校内研修等の充実を図ります。
(5)スクールカウンセラー(以下SC)の活用及び専門機関との連携について
SCについては、第一中学校を拠点校として1人(人吉東小学校と東間小学校も対象校)、第二中学校を拠点校として1人(人吉西小学校と中原小学校も対象校)の計2人が熊本県教育委員会から配置され、充実した相談体制が提供されています。(令和5年度)
また、その他の学校については、教育事務所にSCやスクールソーシャルワーカーの派遣を依頼する形で対応しています。いじめ事案に限らず、SCやスクールソーシャルワーカーをできるだけ早期に利用できるよう、今後も連携を密にして取り組みます。
また、個別の案件に応じて、医療機関や福祉関係などの関係機関との連携が必要になった場合には、定期的なケース検討会議に加え、早急な対応ができるよう関係機関と連携した体制整備を図ります。
(6)教育委員会の関与の在り方について
これまでも、各学校のいじめの状況については、毎月の定例報告において報告があっており、個々の事案について、詳しく各学校と協議しながら、対応を検討しています。また、急を要する事案の場合には、定例の報告によらず随時相談の連絡があっており、早期の対応に努めています。今後も引き続き、学校との密な連携を進めてまいります。
また、各学校のいじめ情報集約担当者(令和3年度新設)を集めた教育委員会主催の研修会を令和5年度から開始しました。この研修会において、いじめの未然防止・早期発見・早期解消の取組の充実について研修や協議を行い、各学校における指導の充実を図ります。
(7)学校いじめ調査委員会の在り方について
学校いじめ調査委員会を設置し調査する場合には、客観的中立性が保たれた組織となるよう弁護士や心理士等の専門家を加えた組織とします。また、可能な限り早期に立ち上げることができるよう、各学校との連携を密に図ってまいります。さらに、いじめの詳細な事実確認を進める場合には、被害児童生徒本人及び関係児童生徒への聞き取りを丁寧に行い、調査に取り組みます。
(8)調査報告の活用について
教育委員会として、今回の再調査委員会の報告書を重く受け止めております。今回の再調査報告書の内容をしっかりと検討し、今後、以上のような取組の更なる充実に努め、各学校と連携しながら、再発防止に向けた取組を確実に進めてまいります。
本資料についても、市内校長会議、教頭・主幹教諭会議等で、周知徹底を図り、いじめを絶対許さない安全・安心な学校・地域社会となるよう取組を進めてまいります。