改正法の概要
この法律は、子の養育に関する父母の責務を明確化するとともに、親権・監護、養育費、親子交流、養子縁組、財産分与等に関するルールが見直されており令和8年4月1日に施行されます。
今回の民法改正のポイントは以下の通りです。
1.親の責務に関するルールの明確化
今回の改正により、親が親権や婚姻関係の有無にかかわらず、次のような責務が明確化されています。
・こどもの人格の尊重:親は、こどもの心身の健全な発達を図るため、こどもを養育する責務を負います。
・こどもの扶養:親は、こどもが親と同程度の水準の生活ができるように、扶養する責務を負います。
・父母間の人格尊重・協力義務:親は、こどもの利益のために、互いに人格を尊重し協力しなければなりません。
・こどもの利益のための親権行使:親権(こどもの面倒をみたり、こどもの財産を管理したりすること)は、こどもの利益のために行使しなければなりません。
次のような行為はこれらの義務に違反する場合があります。
● 父母の一方から他方への暴行、脅迫、暴言等の相手の心身に悪影響を及ぼす言動や誹謗中傷等。
●別居している親が、同居している親による日常的な監護・養育に、不当に干渉すること 。
● 父母の一方が、特段の理由なく他方に無断でこどもを転居(引っ越し)させること。
● 父母間で親子交流の取決めがされたにもかかわらず、その一方が、 特段の理由なく、その実施を拒むこと。
2.親権に関するルールの見直し
これまでの民法では、離婚後は、父母の一方のみを親権者と定める必要がありました。
今回の改正により、離婚後は、共同親権(父母の両方が親権を持つ)の定めをすることも、単独親権(父母のどちらか一方だけが親権を持つ)の定めをすることもできるようになります。
・親権者の定め方
協議(話し合い):親同士の話し合いにより、親権者を共同親権とするか、単独親権とするかを定めます。
家庭裁判所:話し合いで決まらない場合や、親権を共同にすることでこどもに不利益があると裁判所が判断した場合(DVのおそれがある等)は、裁判所が子どもの利益の観点から共同親権とするか、単独親権とするかを定めます。
・親権の行使について
父母が親権者である場合の、親権の行使方法についても、新しい民法では明確化されています。
次のような場合には、親権の単独行使ができます。
(1)監護(こどもの世話)や教育に関する日常的なこと(例:何を食べるか、何を着るか、習い事)
(2)こどもの利益のため急迫の事情があるとき(例:DVや虐待からの避難、緊急の手術が必要な場合)
また、こどもの転居や進学などについては親権の共同行使ができます。
※その他の具体的な内容については、法務省作成のQ&A形式の解説資料(民法編)
(外部リンク)
でご確認ください。
(外部リンク)3.養育費の支払確保に向けた見直し
今回の改正により、離婚のときに養育費の取決めを行えなかった場合でも、新たに「法定養育費」を請求できるようになり、容易に差押えの手続きを申し立てることができます。
・法定養育費
離婚のときに養育費の取決めをしていなくても、こどもを主に養育している親は、一定の「法定養育費」を相手に対し請求できるようになります。「法定養育費」の金額は、今後、法務省令で定められます。
※法定養育費はあくまでも暫定的・補充的なものです。こどもの健やかな成長を支えるためには、適正な額の養育費の取決めをしていただくことが重要です。
・裁判手続きの利便性向上
養育費は各自の収入を基礎として金額を決定することとなります。今回の改正では、その手続きをスムーズに進めるために、家庭裁判所が当事者に収入情報の開示を命じることができます。また、養育費を請求するための民事執行の手続きにおいて、地方裁判所に対する1回の申し立てで、財産開示手続、情報提供命令、債券差押命令という一連の手続きを申請できるようになります。
4.安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し
新しい民法では、親子交流が安全・安心にできるためのルールが見直されました。
・婚姻中別居の場合の親子交流
これまでは、結婚したまま別居している場合の親子交流に関するルールがありませんでした。
今回の改正により、結婚したまま別居している親子については、こどもの利益を最優先に考慮して、父母の話し合いか、話し合いで決まらない場合は家庭裁判所の審判により親子交流についての取決めをすることが明確になりました。
・DV・虐待に配慮した親子交流の「試行的実施」
親子交流を始める際、特に過去にDVや虐待があった場合などは、安全性を確認しながら交流を始めるための仕組みが整えられました。
試行的実施とは、裁判所での手続き中に、こどもの心身に問題がないことを確認した上で、試験的に交流を実施してみることを促す仕組みです。
・祖父母など(父母以外の親族)との交流
祖父母とこどもが親子関係と同等に親密な関係であったときなど、こどもの利益のため特に必要だと家庭裁判所が認めたときは、父母以外の親族とこどもとの交流を実施するよう定めることができるようになりました。
参考ページ
詳しくはこちらの資料もしくは、法務省のHP
(外部リンク)
をご確認ください。
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