○ひとよしから、米を原料とする球磨焼酎の地域文化を紡ぎ広める条例

平成26年6月24日

条例第26号

清流球磨川、こんこんとたたえる水。黄金に輝く稲穂。みず穂の里人吉(ひとよし)は、晩秋、朝霧が濃くなる頃、球磨焼酎(くましょうちゅう)造りが始まる。なめらかで、厚みのある焼酎。香りの焼酎。蔵元に息づくそれぞれの味わい。

戦国時代に、大陸から人吉へと伝わった焼酎とその製法。以来500年、最も古い由緒と伝統を誇り、その味と香りは杜氏たちの焼酎造りに懸ける情熱によって、今も磨かれ続けている。

原料の米、使う地下水、そして、蔵に生きる酵母菌、歴史と伝統の違いによって、多種多様な味わいの米の焼酎ができ上がる。

球磨焼酎は、燗(かん)をして飲むのもうまい。銚子ではなくガラ、杯ではなく、チョクを使う。「起こしてくだんもし。」伏せられたチョクを返し、一杯目。

ガラからチョクに注がれた焼酎は、一滴ずつ露をなめるように舌の上に落とす。舌の先でまず味わう。呼吸とともに鼻孔でも味わいながら、ちびりちびりと飲むところがだいご味。「重ねてくだんもし。」「ぬくめてくだんもし。」と更に二杯勧める。そこから、初めて返杯。「落としてくだんもし。」と相手の手の下に両手を添える。相手は、その掌にチョクをころりと落とす。これが球磨焼酎の流儀。

一汁三菜。菜っ葉漬けにアユ料理。今に受け継ぐ本物の味。家族の味。焼酎が紡ぐ食文化。

晴れの舞台には、焼酎。門出にも焼酎。焼酎との出会いは、人との出会い、新たな人生との出会い。

「いっちょ、にい。」勝たなくてもいい、負けるが勝ちの球磨拳(くまけん)。

失われつつある日本の伝統文化、人の優しさ。焼酎は、人と人、心と心を紡ぐ。

四季折々の自然に育まれた美しき日本人の心。それは、他人へのいたわり、もったいないやおもてなし、いただきます、ごちそうさまの精神。大切にしたい、守りたい。だから、球磨焼酎。

球磨焼酎の地域文化を人吉から全国、そして世界へ発信する。

(目的)

第1条 この条例は、球磨焼酎の普及促進に関し、市、蔵元等及び事業者並びに市民の役割を明らかにするとともに、球磨焼酎の普及を通して球磨焼酎の地域文化の振興を図り、もって地域経済の活性化に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 球磨焼酎 米こうじ及び本地域の地下水を原料として発酵させた一次もろみに米及び本地域の地下水を加えて、更に発酵させた二次もろみを本地域において単式蒸留器をもって蒸留し、かつ、容器詰をしたものをいう。

(2) 球磨焼酎の地域文化 球磨焼酎に関連する本地域の歴史及び球磨拳等の伝統文化をいう。

(3) 蔵元 球磨焼酎を製造する者をいう。

(4) 蔵元等 蔵元及び球磨焼酎酒造組合をいう。

(5) 事業者 球磨焼酎の販売又は提供、原料である米の生産その他の関連する事業を営む者をいう。

(6) 市民等 市民及び観光旅行者をいう。

(7) 本地域 人吉市及び球磨郡の地域をいう。

(8) 球磨拳 本地域に伝わる独特の指遊びで、勝負に負けた人がチョクに注がれた焼酎を飲み干さなければならないという習わしのものをいう。

(基本理念)

第3条 球磨焼酎の普及促進に当たっては、市、蔵元等及び事業者並びに市民がそれぞれの役割を果たすとともに、相互に連携を図り、一体となって推進するよう努めるものとする。

(市の役割)

第4条 市は、球磨焼酎の普及促進に当たっては、蔵元等及び事業者並びに市民と相互に協力するものとする。

2 市は、球磨焼酎に対する市民等の関心と理解を深めるために必要な措置を講じるものとする。

(蔵元等及び事業者の役割)

第5条 蔵元等及び事業者は、球磨焼酎が本地域の伝統的な文化に深くかかわり、支えていることを理解し、常に創意工夫を行い、自ら積極的に乾杯等の球磨焼酎の普及促進を図るための活動に取り組むよう努めるものとする。

2 蔵元等は、球磨焼酎の製造に関する技術を継承するとともに、製造に従事している者の後継者を育成するために必要な措置を講じるものとする。

(市民の役割)

第6条 市民は、球磨焼酎が本地域の伝統的な文化を支え、潤いのある豊かな生活の実現に寄与していることについての理解を深め、また、個人の意思を尊重し、節度ある飲酒を心掛けながら、球磨焼酎の普及促進に努めるものとする。

この条例は、平成26年8月8日から施行する。

ひとよしから、米を原料とする球磨焼酎の地域文化を紡ぎ広める条例

平成26年6月24日 条例第26号

(平成26年8月8日施行)

体系情報
第9編 産業経済/第3章
沿革情報
平成26年6月24日 条例第26号