○人吉市子ども・子育て基本条例

平成25年12月25日

条例第52号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第5条)

第2章 責務及び役割(第6条―第10条)

第3章 事業計画(第11条・第12条)

第4章 子ども・子育て会議(第13条―第16条)

第5章 基本的施策(第17条―第21条)

第6章 子どもの権利擁護(第22条―第24条)

第7章 雑則(第25条)

附則

子どもは、私たちの生命を受け継ぐかけがえのない宝物であり、人類未来への希望である。

本市の美しい自然環境や長い歴史に彩られた豊かな文化の中で、一人ひとりの子どもが健やかに成長することは、私たち市民みんなの願いである。

少子化や核家族化の進行に伴い、また、過疎化や高齢化によって、地域や家庭の子育て力の低下が課題となっている今日、子どもを地域の宝として大切に育て、子どもが夢と希望を持って健やかに成長できる環境を整備することが、私たちにとって重要な責務となっている。

私たちは、今こそしっかりと子どもと向き合い、子どもの確かな成長を見届けていかなければならない。そこで、誰もが安心して子どもを生み、子育てに喜びを感じられるように、また、全ての子どもが等しくその成長に応じた出会いや体験を通して、命の大切さを学び、自立する力、他人を思いやり尊敬しあう心などを身につけられるように育てていくことのできる環境を創り上げていくことを私たちは宣言する。そして、子どもの心身ともに健やかに生きる権利が普遍的なものとして保障され、虐待、いじめ等によりそれが侵害されるときは断固たる行動でこれを阻止し、子育て家庭が幸せを感じることができるように、地域社会全体が共に手を取り合って具体的に行動しなければならない。

ここに、子どもたちがいきいきと輝き、みんながそれを喜び合える人吉の実現を目指してこの条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、保護者、地域住民、学校・施設等関係者及び事業者の役割並びに市の責務を明らかにし、子どものための施策に関する基本的事項を定めることにより、その総合的かつ計画的な推進を図り、もって本市で育つ全ての子どもたちがいきいきと輝き、みんながそれを喜び合える人吉の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 子ども 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者をいう。

(2) 保護者 親権を有する者又はその者に代わり子どもを育てる立場にある者をいう。

(3) 地域住民 子どもにとって身近な生活圏において居住し、若しくは活動する個人又はそこに通勤し、若しくは通学する個人及びこれらの者を構成員とする法人その他の団体をいう。

(4) 学校・施設等関係者 学校、保育所、幼稚園その他の子どもが育ち、又は学ぶことを目的として通学し、又は通園する施設(以下「学校・施設等」という。)の設置者、管理者又は職員をいう。

(5) 事業者 市内で事業活動を行う個人又は法人その他の団体をいう。

(基本理念)

第3条 子どもたちがいきいきと輝き、みんながそれを喜び合える人吉の実現を目指して、子どもを社会全体で健やかに育むための取組は、子どもの人格及び子どもが有している心身ともに健やかに生きる権利(以下「生きる権利」という。)を尊重して行われなければならない。

2 子どもを社会全体で健やかに育むための取組は、子どもの最善の利益を考慮して行われなければならない。

3 子どもを社会全体で健やかに育むための取組は、子どもの年齢及び発達に応じて行われなければならない。

4 子どもを社会全体で健やかに育むための取組は、保護者、地域住民、学校・施設等関係者、事業者及び市が、それぞれの役割又は責務に応じて主体的に取り組み、又は相互に協働して行われなければならない。

(子どもの生きる権利の尊重)

第4条 保護者、地域住民、学校・施設等関係者、事業者及び市は、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の理念にのっとり、子どもが有する生きる権利を尊重するとともに、相互に連携、協力して子どもが健やかに育つよう必要な支援に努めるものとする。

(子どもの意見表明及び参加への配慮)

第5条 保護者、地域住民、学校・施設等関係者、事業者及び市は、子どもが意見を表明することができ、その中で適切とされる意見が確実に反映される環境の整備に努めるものとする。

2 保護者、地域住民、学校・施設等関係者、事業者及び市は、子どもがその年齢及び発達に応じて、様々な体験又は学習の活動に自主的に参加できるような機会を作るよう配慮するものとする。

第2章 責務及び役割

(市の責務)

第6条 市は、第3条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、子どもの立場に配慮しながら、次に掲げる責務を果たさなければならない。

(1) 国、他の地方公共団体及び関係機関等と連携協力して、子どもを社会全体で健やかに育むための施策を策定し、実施すること。

(2) 子どもを社会全体で健やかに育むための施策を実施するため、情報の提供及び必要な財政上の措置等を講じること。

(3) 保護者、地域住民、学校・施設等関係者及び事業者と協働し、それぞれの役割を担うために必要な支援を行うこと。

(保護者の役割)

第7条 保護者は、基本理念にのっとり、子育てについて第一義的な責任を有することを自覚し、子どもとの対話を大切にしながら、家族とともに次に掲げる役割を果たすよう努めるものとする。

(1) 子どもに愛情及び関心を持ち、子どもとのふれあいを大切にし、子どもの心身のよりどころとしての家庭環境づくりを行うこと。

(2) 子どもが命の大切さを学ぶとともに、基本的な生活習慣及び規範意識を身に付けることができるよう、自らが模範を示しながら子どもの成長を支えること。

(3) 子どもに様々な経験及び学習の機会を与え、心豊かにたくましく成長するよう支援すること。

(4) 日常における挨拶及び地域行事への参加を通して、支えあうことの大切さを学ぶため、日頃から子どもとともに地域住民との交流を図ること。

(地域住民の役割)

第8条 地域住民は、基本理念にのっとり、地域が子どもの社会性及び豊かな人間性を育む場であること、並びに家庭における子育てを補完する機能があることを自覚し、子どもとの対話を大切にしながら、次に掲げる役割を果たすよう努めるものとする。

(1) 目配り、声かけ、挨拶等を通して相互の信頼感を高めながら、子どもが健やかに育ち、保護者が安心して子育てができる地域づくりに努めること。

(2) 子どもの考え及び行動に関心と理解を持つとともに、自らが模範を示しながら、子どもが地域社会の一員としての役割を自覚することができるよう支援すること。

(学校・施設等関係者の役割)

第9条 学校・施設等関係者は、基本理念にのっとり、学校・施設等が集団の中での遊び及び学習を通して子どもの豊かな人間性及び将来の可能性を育む場であることを自覚し、互いに認め合う人間関係づくりに配慮しながら、次に掲げる役割を果たすよう努めるものとする。

(1) 子どもが心身ともに健やかに成長し、生きる力を身に付けること、並びに能力及び可能性を最大限に伸ばすことができるよう支援すること。

(2) 子どもが命の大切さを学び、次代の親として家庭生活を大切にする心情を育む機会を提供すること。

(3) 子どもにとって、学校・施設等が安全にかつ安心して育ち、又は学ぶことのできる場となるように、学校・施設等関係者が互いに連携し、保護者、地域住民及び事業者と協力して環境づくりを行うこと。

(4) 虐待、いじめ、不登校等については、関係機関等と連携、協力し、未然防止、早期発見及び解決に向けた取組を行うこと。

(事業者の役割)

第10条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たり、自らの活動が子どもの成長に様々な影響を与えることを自覚し、子どもの立場に配慮しながら、次に掲げる役割を果たすよう努めるものとする。

(1) 子どもにとって安全で良好な社会環境づくりを推進するものとし、特にその事業の実施及び施設の運営に際しては、子どもの安全・安心の確保に努めること。

(2) 保護者、地域住民、学校・施設等関係者及び市が行う子どもを社会全体で健やかに育むための取組に協力すること。

(3) 仕事と生活の調和の観点から、その事業所で働く保護者が、安心して仕事と子育てを両立できるよう職場の環境づくりを行うとともに、家庭における子育ての重要性について啓発すること。

(4) 医療機関その他子育て支援に関する事業活動を行う者にあっては、その専門的な知識及び経験を生かし、子どもの健やかな成長を支援すること。

第3章 事業計画

(子ども・子育て支援事業計画)

第11条 市は、子ども・子育て支援のための施策を総合的に推進するため、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号。以下「支援法」という。)第61条に規定する子ども・子育て支援事業計画(以下「事業計画」という。)を定めるものとする。

2 事業計画は、支援法第60条に規定する国の基本指針及び同法第62条に規定する都道府県の事業計画と調和が保たれたものでなければならない。

(事業計画の策定又は変更)

第12条 市は、事業計画を策定し、又は変更するときは、あらかじめ次条に規定する会議の意見を聴かなければならない。

2 市は、事業計画を策定し、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

第4章 子ども・子育て会議

(子ども・子育て会議)

第13条 事業計画の策定その他子ども・子育て支援に関する施策の総合的かつ計画的な推進に関し必要な事項及び当該施策の実施状況を調査審議するため、支援法第72条第1項の規定に基づき、本市に人吉市子ども・子育て会議(以下「会議」という。)を置く。

(令5条例9・一部改正)

(会議の組織)

第14条 会議は、委員15人以内をもって組織する。

2 会議に会長及び副会長各1人を置き、委員のうちから互選する。

3 会長は、会務を総理し、会議を代表する。

4 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき、又は会長が欠けたときは、その職務を代理する。

(会議の委員)

第15条 会議の委員は、次に掲げる者のうちから、市長が人吉市教育委員会(以下「教育委員会」という。)の意見を聴いて委嘱する。

(1) 学識経験のある者

(2) 関係団体の推薦を受けた者

(3) 支援法第7条第1項に規定する子ども・子育て支援に関する事業に従事する者

(4) 保護者

2 委員の任期は、2年とし、再任を妨げない。ただし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。

(会議の運営)

第16条 会議は、会長が招集し、その議長となる。

2 会議は、過半数の委員が出席しなければ開くことができない。

3 会議の議事は、出席した委員の過半数をもって決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

4 会議の庶務は、健康福祉部及び教育部において処理する。

第5章 基本的施策

(子どもの成長への支援)

第17条 市は、子どもの健やかな成長を支援するため、その健康の確保及び増進に関する施策等の推進を図るものとする。

2 市は、子どもの生きる力を育てるための学校教育環境・保育環境等の整備及び充実を図るものとする。

3 市は、子どもが地域社会の一員として自立した大人へと育つことができるよう、多様な経験、学習等の機会の提供を図るものとする。

(子育て家庭及び家庭教育への支援)

第18条 市は、保護者が安心して子育てができるよう、子どもの成長及び子育てに関する情報の提供、必要に応じた子育てに係る経済的負担の軽減、地域の子育て支援体制の整備等家庭及び地域における子どもを育てる力の向上を図るものとする。

2 市は、多様な保育サービスの充実、子育てがしやすい就業環境の整備等子育てと仕事の両立を支援する環境づくりに取り組むものとする。

3 市は、保護者が子どもの年齢及び発達に応じて大切にしたい家庭教育の内容、子育ての知識その他の保護者として成長するために必要なことについて学ぶことを支援するものとする。

(相談支援体制の充実)

第19条 市は、妊娠、出産、家庭生活その他子どもの成長及び子育てに関する問題又は悩みに適切に対応できるよう総合的な相談支援体制の充実を図るものとする。

(協働等による施策の推進)

第20条 市は、前3条に規定する施策を推進するに当たっては、関係機関との連携協力並びに保護者、地域住民、学校・施設等関係者及び事業者との協働のもとに、子ども及び子どもを取り巻く環境の実情に合わせて実施するものとする。

(広報及び啓発)

第21条 市は、この条例の趣旨について、子ども、保護者、地域住民、学校・施設等関係者及び事業者の理解を深めるため、広報活動及び啓発活動を効果的に行うものとする。

第6章 子どもの権利擁護

(子どもを権利侵害から守るための対策)

第22条 市は、子どもに対する虐待、いじめを始めとする子どもの生きる権利の侵害について、予防及び早期発見に取り組むとともに、保護を要する子どもの救済その他の措置を講ずるために必要な体制整備を図るものとする。

2 前項の取組及び体制整備は、児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号)及びいじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)の趣旨にのっとり、行うものとする。

(子ども・子育て相談員)

第23条 市は、子どもに対する虐待、いじめを始めとする子どもの生きる権利の侵害について、子ども又はその関係者からの相談等に対応するため、人吉市子ども・子育て相談員(以下「相談員」という。)を置く。

2 相談員は、4人以内とし、人格識見に優れ、子どもの人権、教育等に関して知識及び経験を有する者のうちから、市長及び教育委員会が任用する。

(令元条例44・一部改正)

(相談員の職務)

第24条 相談員は、学校・施設等関係者と協働し、児童相談所、法務局、警察署等の関係機関と連携、協力しながら次の業務を行う。

(1) 子どもの生きる権利の侵害について、子ども又はその関係者から相談を受け、その解決のために助言、支援等を行うこと。

(2) 生きる権利の侵害を受けている、又はそのおそれがある子どもについて、本人若しくはその関係者から救済の申立て又は発見者から通告を受け、事実の調査及び関係者間の調整を行うこと。

(3) 子どもの生きる権利の侵害等の事例を検証し、その再発防止を図ること。

(4) 子どもの権利擁護、人権尊重等に関して広報し、及び啓発すること。

(5) その他子ども又はその関係者から相談を受け、助言、支援等を行うこと。

2 相談員は、職務上知り得た秘密を他に漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。

第7章 雑則

(委任)

第25条 この条例に定めるもののほか必要な事項は、別に定める。

(施行期日)

1 この条例は、平成26年4月1日から施行する。ただし、第3章第4章附則第2項及び附則第3項(子ども・子育て会議に係る部分に限る。)の規定は、公布の日から施行する。

(次世代育成支援対策地域協議会)

2 当分の間、第13条に規定する人吉市子ども・子育て会議は、次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)第21条に規定する次世代育成支援対策地域協議会として、人吉市次世代育成支援行動計画の進捗管理及び検証について調査審議するものとする。

(人吉市非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)

3 人吉市非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例(昭和36年人吉市条例第18号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

(令和元年条例第44号)

この条例は、令和2年4月1日から施行する。

(令和5年条例第9号)

この条例は、令和5年4月1日から施行する。

人吉市子ども・子育て基本条例

平成25年12月25日 条例第52号

(令和5年4月1日施行)

体系情報
第8編 生/第1章 社会福祉/第2節 児童・母子父子福祉
沿革情報
平成25年12月25日 条例第52号
令和元年9月26日 条例第44号
令和5年3月22日 条例第9号