○人吉市環境基本条例

平成25年3月26日

条例第6号

私たちのふるさと、人吉市には、人吉球磨の山々と清流球磨川水系、相良700年の歴史が育んだ文化財や地場産業、比類なき価値を持つ肥薩線産業遺産群という世界に誇れる3つの宝物がある。これらはまさに、自然環境と文化産業等の人間生活を調和させてきた先人の営みの賜物である。このような恵まれた地域資源を最大限に活かし、活気と賑わいの中で、市民みんなが健康で笑顔で暮らせることが、私たちのまちづくりの理念である。

私たちには、これまで受け継いできた美しい自然や歴史という宝物を次世代に引き継ぎ、さらに今後、未来へ向けて守っていく責務がある。

しかしながら、今日、人間の活動が環境への負荷となり、山や川を荒廃させ、自然環境の破壊につながる事態や、向こう三軒両隣の精神及び思いやりに欠ける迷惑行為が生活環境を悪化させる問題が生じている。また、資源やエネルギーの浪費などの環境を顧みない活動が地球温暖化につながり、異常気象による災害の発生という形で私たちに降りかかってきている。

私たちは、自らが自然の生態系の一部であり、人吉市が地球の一部であることを強く認識しなければならない。私たちがそれぞれの責務と役割を果たしていくことにより、良好な環境の保全、回復及び創造が図られ、持続的に発展できる社会づくりが可能となる。

ここに、安らぎと潤いある快適な生活環境を確保し、自然環境と人間生活が共に輝く美しき千年都市ひとよしの実現を目指して、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、市における良好な環境の保全等に関する環境政策の理念及び施策の基本となる事項を定め、市、市民等(市内に居住し、若しくは滞在し、又は市内を通過する者をいう。以下同じ。)及び事業者(市内において事業活動を行う者をいう。以下同じ。)の責務を明らかにし、自然環境と人間生活が共に輝く美しき千年都市ひとよしの実現を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この条例で使用する用語は、次項に定めるもののほか、環境基本法(平成5年法律第91号)で使用する用語の例による。

2 この条例において、「環境の保全等」とは、多様な生命が生存できる基盤としての人吉球磨の山々と清流球磨川水系等の自然環境及び循環型社会を維持できる産業、伝統、文化等の社会環境の調和した良好な環境を保全、回復及び創造する人々の営みをいう。

(基本理念)

第3条 環境の保全等は、本条例の目的及び次に掲げる基本理念(以下「基本理念」という。)により行わなければならない。

(1) 市民等が、健康で文化的に笑顔で生活する上で必要とする良好な環境を確保し、これを将来の世代へ継承していくこと。

(2) 自然と人間との共生が、将来にわたって維持されること。

(3) 市、市民等及び事業者は、環境の保全等に関し、それぞれの責務を自覚し、公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に取組を行うこと。

(4) 循環型社会の形成等により、環境への負荷の少ない持続的に発展することができる社会を構築すること。

(5) 市、市民等及び事業者は、地域の環境が地球全体の環境にも関わっていることを理解し、地球環境の課題を自らのものであると認識し、あらゆる日常生活及び事業活動において積極的に取組を行うこと。

(市の責務)

第4条 市は、本条例の目的及び基本理念にのっとり、自然的又は社会的条件に応じた環境の保全等に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、実施しなければならない。

2 市は、自らが行う全ての施策の策定及び実施に当たっては、環境の保全等に配慮するとともに、環境への負荷の低減に努めなければならない。

3 市は、環境の保全等に関する情報の収集及び提供に努めるものとする。

4 市は、市民等、事業者並びにこれらの者の組織する民間団体及び地域住民等による環境の保全等に関する自発的な活動が推進されるため、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(市民等の責務)

第5条 市民等は、本条例の目的及び基本理念にのっとり、日常生活において、生活排水等による水質汚濁の防止、資源及びエネルギーの有効利用、廃棄物の減量等良好な環境づくりに努めるものとする。

2 市民等は、環境美化活動、資源回収活動その他の環境の保全等に関する活動への積極的な参加に努めるとともに、市が実施する環境の保全等に関する施策に協力するものとする。

3 市民等は、地域において良好な近隣関係の形成に努めるとともに、協力して安全安心及び快適な地域環境づくりを行うものとする。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、本条例の目的及び基本理念にのっとり、その事業活動に関し、環境への負荷の低減及び環境の保全等に自ら進んで努めるとともに、公害の防止、廃棄物の適正処理及び環境の保全等のために、自らの責任と負担において、必要な措置を講じなければならない。

2 事業者は、関係法令、条例、規則等を遵守するとともに、市が実施する環境の保全等に関する施策に協力するものとする。

3 事業者は、地域において良好な近隣関係が形成できるように、良好な環境づくりに配慮するとともに、環境の保全等に係る紛争が生じたときは、その解決に努めるものとする。

4 事業者は、地域において良好な環境を創造するために協力するものとする。

(基本方針)

第7条 市は、基本理念の実現を図るため、次に掲げる基本方針(以下「基本方針」という。)により総合的かつ計画的に施策を行うものとする。

(1) 大気、水、土壌その他環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されるよう努めること。

(2) 生活や活動に伴う騒音、振動、悪臭その他環境の汚染を防止し、並びに緑化及び環境美化を推進し、生活環境が快適な状態に保持されるよう努めること。

(3) 資源の循環的な利用及びエネルギーの有効な利用を推進するとともに、廃棄物の排出を抑制し、環境への負荷が少ない循環型社会の実現に努めること。

(4) 人と野生生物の適切な関係の構築について理解し、野生生物の生息場所又は生育環境に配慮するとともに、生態系の多様性の確保、動植物の保護管理その他豊かな自然環境の保全に努めること。

(5) 歴史的及び文化的遺産と自然環境を保持し、その活用を図るとともに、地域の特性を生かした魅力ある快適環境が保全、回復及び創造されること。

(6) 地球温暖化の防止その他地球環境保全の推進に努めること。

(環境の保全等に関する教育、学習等)

第8条 市は、市民等、事業者並びにこれらの者の組織する民間団体及び地域住民等が、自ら環境の保全等についての理解を深め、それぞれの立場において責任ある行動がとれるようにするため、これらの者に対し、環境の保全等に関する教育及び学習の機会を提供するとともに、環境の保全等に関する広報活動を充実するよう努めるものとする。

2 前項の教育及び学習の機会の提供に当たっては、幅広い年代にわたり継続して学ぶことができるよう配慮するものとする。

(環境基本計画)

第9条 市長は、基本方針の実現を図るため、人吉市環境基本計画(以下「基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 環境の保全等に関する目標、施策の方向性及び評価方法

(2) 前号に掲げるもののほか、環境の保全等に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 市長は、基本計画を定めるときは、あらかじめ市民等、事業者並びにこれらの者の組織する民間団体及び地域住民等の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、人吉市環境審議会(人吉市環境審議会条例(平成6年人吉市条例第5号)第1条に規定する人吉市環境審議会をいう。)の意見を聴かなければならない。

4 前項の市民等、事業者並びにこれらの者の組織する民間団体及び地域住民等の意見は、基本理念に則したものでなければならない。

5 市長は、基本計画を策定したときは、速やかにこれを公表しなければならない。

6 前3項の規定は、基本計画を変更する場合に準用する。

(情報の公表)

第10条 市長は、本市の環境の状況及び環境の保全等に関して講じた施策を定期的に公表しなければならない。

(施策の推進体制の整備)

第11条 市は、庁内の緊密な連携及び施策の調整を図り、体制の整備等必要な措置を講ずるものとする。

(指導等)

第12条 市は、良好な環境の保全等を図る上において、これを著しく阻害し、又はそのおそれがある者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。

(国等との連携等)

第13条 市は、環境の保全等に関する施策を実施するに当たっては、国、県、他の市町村及び関係団体との連携及び協働に努めるものとする。

2 市は、市の良好な環境を確保するために必要と認められる場合には、国、県、他の市町村及び関係団体に対し、必要な措置を講ずるよう要請するものとする。

3 市は、第7条の規定により施策を行うに当たっては、市内のみならず、近隣の市町村や水系を含めた広域的な観点に立って環境の保全等が図られるように努めなければならない。

(協働)

第14条 市、市民等、事業者並びにこれらの者の組織する民間団体及び地域住民等は、環境の保全等に関する活動を協働して推進しなければならない。

この条例は、平成25年4月1日から施行する。

人吉市環境基本条例

平成25年3月26日 条例第6号

(平成25年4月1日施行)